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兼任講師を務めさせていただいている明治大学では毎年夏、「計画・設計スタジオワークス展」を開催しています。学生の優秀作品と共に教員の推薦図書も紹介されますが、今年は妹尾河童著『河童が覗いたインド』と西澤文隆著『日本の建築と庭―西沢文隆実測図集』を採り上げました。きっかけは目下その利用方法を検討している3Dスキャナー。今日は図集を読みかえし、眺めかえし、推薦文を書きました。以下、推薦文です。

 最近3Dスキャナーに触れる機会があった。スキャナーは会議室を出席者の表情もろとも1分とかからずスキャンし、コンピュータ上に点群データとして空間を再現した(しかもカラー付で!)。即座に思い浮かんだのが『河童が覗いたインド』。小さなホテルの部屋は室内寸法のみならず、ベッドの幅、通路の幅に至るまで、巻尺をあててスケッチしている。3年生の設計製図のエスキスをして感じるのは、身近な寸法さえイメージできていない学生が多いこと。感性豊かな今のうちに是非巻尺を携行し、あちこち図りまくってスケール感を養って欲しい。
 
 その3Dスキャナーのスキャニング範囲は300mにも及ぶと聞き『日本の建築と庭―西沢文隆実測図集』を思った。約20年前、奈良に住んだ2年間は、日曜日毎に奈良や京都の寺社仏閣、庭を片端から見て回った。その頃、「実測図」展の図録として出版されたA4版は、建築と庭を共に描いた図面として参考になったが、如何せん原図の4~5分の1では詳細まで判らない。10年後に発行された本書では図面の多くは原図の50%で印刷され、巻尺をあて実測、実感した空間が生き生きと伝わってくるようで飽きることがない。西澤氏曰く、「巻尺やコンベックスを流して実測していると、体と対象物の関係が全く一つに融合せざるを得ない...私は徹底的に実測の宝の海に浸りきりたい。」

日本の建築と庭.jpg
6月28日の日経新聞書評で取り上げられたデービッド・アトキンソン氏著『新・観光立国論』を読みました。元GSアナリストの著者が数字を分析、少子高齢化が進む日本で成長が期待できるのは観光だと提言しています。現在は国宝・重文の補修を手掛ける小西美術工芸社社長を務める氏は「文化財には建築家の目線だけでなく、多様性のある目線が必要」と書いていました。日本の観光にも独りよがりの押しつけでなく、多様性が必要だとの視点です。
立教大学兼任講師の清水慎一先生に先日伺った観光地域づくりのお話と共通するものがありました。

新・観光立国論.jpg

追記
朝日新聞では7月5日、毎日新聞では7月12日の書評で取り上げられました。

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